Memories・・・2012年09月06日 12時36分


このベビーバギーは、私がアメリカに行った6才の頃に
お人形用にと買ってもらったものです。

気の遠くなるような年数なので何年前のものと明記するのは
あえて避けさせて頂きますが(笑)、母がずっと大事にとって
おいてくれ、自身もとても愛着があったものでしたが、
この度断捨離中に思い切って親友の7才の娘さんにあげて
しまいました。

‘70年代のアメリカらしい、ポップな配色と柄がかわいく、
しっかりとした骨組みで折り畳むことも出来ます。
日本ではあまり見かけませんが、アメリカの幼児は歩けるように
なる頃になると、必ずと言っていいほどバギーに人形を乗せて
押して歩いているのです。自分が乗った方がいいのでは?!
と思ってしまう小さい女の子がこういうバギーを押して散歩を
している姿は、それはそれは微笑ましく、たまらなく可愛いのです!

いつまでも思い出としてとっておきたく手放すのをずいぶん
迷いましたが、私の娘も充分使いましたし、友人の子が嬉しそうに
押しているのを見て、また違うおうちで「大事なもの」となってくれる
のも幸せなことだな~と思いました。

思い出は形に残すものではなく、心のなかに残るもの。

音は消えてなくなってしまうけど、音楽も心に残り続けますよね。

今年もせんくらで「思い出づくり」、しましょう。

今日で最後のブログとなりました。読んでくださってありがとうございます。

See you soon!


三舩優子(ピアノ)

だいすき2012年09月05日 13時12分


好きなピアニストはたくさんいますが、まだ演奏を聴きに行ける人の中で
とても心酔しているひとりにヴァレリー・アファナシェフがいます。
学生の頃から、彼が来日した時には極力足を運んでいますが、
特に近年のコンサートは哲学者のお話を聴きにいく、、、
という感覚で、深く感銘を受けます。

彼のリサイタルは作曲家の想いやその作品の意味に繋がりを
もたせてプログラム作りがされていて、たとえば演奏の順番は
ベートーベン、ドビュッシー、リスト、またベートーベン、と時代は飛び、
なおかつソナタの中の1楽章だけだったりいきなり小品になったりと
一見バラバラなのですが、全体を通して聴いていくとひとつの流れが
見えてきて、本を読んだかの如く強い説得力を持つのです。

ゆえに、曲間の拍手もなしで、登場するや否やただちに弾き始める
のも独特のスタイルです。

作家としても彼はすでに3冊の本を出しています。
その中でも一番新しいのが写真の「天空の沈黙」。
昨年リサイタルに行ってサインをして頂いた私の現在のバイブルです!。
非常に高度な、考えさせられる内容なので何度も読み返しながら
理解を深めていますが、 彼の思想や音楽に向かう姿勢すべてを
敬愛していると言っても過言ではありません。

左上のプログラムは自身のコンサートのときには必ず持ち歩いて
演奏前に読み返したり、 右上のインタビュー記事はキッチンの目に付く
ところに置いて、料理しながらちらちらと目に入るようにしていたり・・・
そうです、ただの追っかけです(笑)。

演奏のみならず、ことばでもっても影響を与えられる彼の才能には
圧倒されます。
その彼の言葉を繰り返し読みながら、音楽に対する真摯な気持ちを
常に忘れずにいなければ、と自分を戒めているのです。


三舩優子(ピアノ)

WINE2012年09月04日 10時01分


私がお酒好きなことは結構知られてきているかもしれませんが、
ここ数年は日本でもすっかり日常的に飲まれるようになった
"ワイン"が私にとって日々の友です。

そのおかげで人との交流も広がったり、お酒を通して文化を知ったりと、
ただ飲んでるだけではなくいいことも多々あります(言い訳?笑)。
美味しいワインにはどんなお料理と合わせるかも大事なポイントなので、
料理の知識やレパートリーも増えました。

しかし一応手の仕事をしている者としては、コルクを抜く作業がちょっと
負担に感じることもあったり。
でもガスでシュポっと抜くのもなんかあっけないしなぁ〜と思っていた
ところ、友人からとても便利なものをもらいました。

電動式のオープナーで、写真にある黒い筒をボトルにかぶせてボタン
を押すだけでぐるぐると中でコルクを抜き、しかも絶対失敗がないのです!

ついでにもう一つご紹介したいのは右のボトルにかけてある
クレ・デュ・ヴァンといって、ワインの飲み頃、熟成度を測定出来る道具。
先にある円形の同色の特殊合金部分(パスティーユ)をワインにつける
1秒ごとが、1年の熟成度に相当して味が変化していくというもの。
5秒だと5年、10秒だと10年...と味が変化していくのが画期的です!

触媒として作用するのでワイン自体に他の物質を与えることなく、
本体も消耗しないので、お湯でさっとすすぐだけで半永久的に効果が
保証されているそうです。

赤ワインのタンニンは和らいでまろやかになりますし、白だと酸味を
抑えてフルーティーさが増しておいしくなるので、外出先でちょっと口に
合わないワインや低価格なものにこっそりひと触れさせたり出来る
スグレモノです。


三舩優子(ピアノ)

もうすぐ70才の恋人2012年09月03日 16時57分


私が小学校5年生の頃から共に歩んで来たパートナーのピアノです。

それまでアップライトよりさらに小さいスピネットを弾いており、
ショパンのワルツを勉強し始めてさすがに連打やペダリングに限界を
感じて買い替えたのがこのピアノで、今でも大事に私を支えてくれています。

NYに住んでいたいた頃買ったのですが、調律の方にいろいろ探して
頂いた中でもっともしっくり来たのがこの1943年生まれのNYSteinway。

今ではなかなかなくなってしまったマホガニーの本体と象牙の鍵盤です。

一度弦を張り替えましたが、元の弦の低音部は純銀でした。
当時は何も考えず業者の方に預けてしまいましたが、今になって
「あれだけの銀があればかなりのジュエリーが作れたかも!!」
などと悔やまれます(笑)。

それほど大きいピアノではないですし、当然コンサート会場にある
ものとは音量もタッチも違うので本番前はスタジオに練習しに行くことも
ありますが、やはり音色がたまらなく良いので、今の自分の「音」という
のはこのピアノによって作られていると思います。

おっきな地下スタジオにドーンとフル・コンを2台並べてガンガン練習
してみたい気ももちろんなくはないですが、海外ではかなり偉い先生や
音楽家でも意外と古ーいピアノを愛用し続けていたりしますし、
私もこの恋人と末永く添い遂げたいな、と思っています。


三舩優子(ピアノ)

ピアソラの思い出2012年09月02日 10時25分


昨日は先日発売された新譜についてお話ししましたが、
今日はその中のピアソラにまつわる話をしたいと思います。

私がピアソラの名を初めて聞いたのは中学1年生くらいの頃でした。
ひと頃活躍していた私の叔父のギタリスト、故芳志戸幹雄から
あるとき「ピアソラって知ってるか?」と言われ、テープを聴かされた
のがきっかけでした。

アメリカに居た小学校時代にいろいろな音楽に触れてはいたのですが、
バンドネオンを聴くのは初めてで、"こんな音楽があるんだ..."
ととても印象に残りました。

残念ながら叔父は私がデビューするかしないかの頃に40代で
亡くなったのですが、いつも彼がこもっていた書斎の棚にピアソラの
テープが何本かあったのは強く目に焼き付いていて、亡くなった時に
そのテープだけ何本かもらっておいたのです。

今回録音するにあたってレコーディング前にそのテープを聴いて
おかねば!と必死に探したのですがなぜか見つからず、
録音を終えた直後にひょっこりと出て来たのがこの写真のテープでした。

1982年にピアソラが初来日した時のライブ録音で、NHKによって
デジタル録音されFMで放送された時のものだと思います。
テープが足りなかったからかライブの前半しか入っていないのですが、
奇しくも今回私が叔父を思いながら捧げるつもりで入れた
「天使のミロンガ」も入っていました。
CDに a mis tíos、(私の叔父へ)と記したのはそのためです。

叔父が亡くなってかなりの年月が経ちましたが、こうして思い出とともに
音源が残り、彼の書いた字が残り、そしてピアソラの素晴らしい作品を
今私がピアノでもって受け継いでつないでいく。

これこそがまさに音楽の素晴らしさなのではないかと思うのです。


三舩優子(ピアノ)